読み終わった後、涙がぽろぽろっと出た。
最後のシーンに感動して……とかではなくて、本を閉じた後で、なぜだかぽろぽろっと。
何の涙なのかよくわからなかった。
1章を読んだ時は、サスペンスなのかな、と思った。
2章を読んでいる時、何か知っているような感覚になって、これは何だろう、いつ感じたものだろうかと考えてみたら、20歳くらいの時に初めて山田詠美の「放課後の音符(キイノート)」を読んだ時の感覚と似ているのだと気づいた。
決して文体やストーリーが似ているということではなくて、少女が背伸びするような、大人の世界への無邪気な憧れと畏怖。
それから後、主人公の少女の境遇は、古い昼ドラのような使い古された設定に置かれるのだが、一人の男性と出会うことで、この物語は陳腐にならない。むしろ、予期せぬ展開に目が離せなくなる。
そこまでの悪人は出てこない。
悪人ではないのに、たくさんの人が主人公を傷つける。
人々の善意が彼女を追い詰める。
そして、いろんなことをあきらめかけた失望の日々での邂逅。
そこから物語はスピードを増し、一気に破滅へと向かう。
状況はハッピーエンドとは言えないのだが、なぜかホッとするラスト。
幸せとは何なのかを考える。
悲しいのか何なのかわからない涙が出た。
読み終わった後、作者のインタビュー記事をネットで読んだら、「どこまでも世間と相いれない人たちを書いてきた」とあった。
確かにその通りなのだが、人の弱さを美しく書く人だなと思った。
もう1つびっくりしたのは、作者がずっとBLを書いてきた作家だったということ。
今回読んだ作品の中にその要素は一切なかったのだけど、なるほどな、と思う一面はあった。
「性」というものに寛容な物語だったから。
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