この間、久しぶりに『夏子の酒』を読んだ。

1988~1991年頃に尾瀬あきら氏により執筆された酒造漫画である。新潟の佐伯酒造の娘である夏子が、亡くなった兄から幻の酒米「龍錦」の種籾を託され、兄の夢を自分が実現するために龍錦を復活させ、村の農家を巻き込みながら日本一の酒を造ることに挑戦する・・・というストーリーだ。
最初に私が読んだのは2000年頃だと思うが、今読んでみると、不思議と最初の読後感とは違ったものを感じた。「こんなに社会派の漫画だったっけ?」とも思った。当時の農業や日本酒業界の問題(減反、農薬、三増酒、「純米酒」という言葉すらわからない酒販店など)に、夏子が真っ向からぶつかる姿を描いているのだ。
今もそんな問題点がすべて解決したわけではないが、それでも今回再読して思ったのは、当時とは比べ物にもならないくらい日本酒にとって良い時代になったなぁということ。
酒類全体における日本酒の国内消費量は相変わらず6~7%であり、年々酒蔵の数も減っているが、『夏子の酒』が描かれた頃よりずっと日本酒の未来は明るいと感じた。
もともとコピーライターとして東京で働いていた夏子が書いた「美酒、なないろに輝いて」というコピーに恥じない美酒が今はいくつもあり、それを扱う酒販店や飲食店もどんどん増えている。今読むことで新たにいろいろ気づかされる『夏子の酒』、機会があればぜひ再読を(未読の方はぜひ一読を!ドラマも!)。
余談だが、夏子の男性に対する態度も気になった。草壁さん、黒岩くん、内海酒造の蔵元と、何人もの男を無邪気に惑わす。計算高い小悪魔なのか、ただの天然なのか・・・?そんな見方もまたオススメ(笑)。
※このコラムは、浅野日本酒店様からのご依頼で連載していたものに許可をいただき、加筆・修正して掲載しています。(連載:2016年4月)
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