「日本酒」がいろいろな雑誌で特集されるようになり、「日本酒ブームが来た!」と言われるようになってから、私の感覚ではもう2年は経つように思う。
おいしい地酒が飲める飲食店も増え、浅野日本酒店のような“新しいタイプの酒販店”も出てきた。すでに“ブーム”ではなく“定着”しつつあるのではないかと私などは思っているのだが・・・。
もしそうだとすれば、それはもちろん、蔵元や酒販店、日本酒を扱う飲食店の皆さんの努力の賜物に違いない。
この2年で30蔵以上取材させていただいたが、どの蔵元さんからも「ブームで終わらせないよう、おいしい酒を造らなければ!」という真摯な言葉・姿勢を受け取った。追い風に甘んじているような蔵は1つもなかったと記憶する。
岩手県の「南部美人」醸造元の久慈社長はこう言っていた。
「日本酒には長い間、アゲインストの風が吹いていた。でも、今ようやく追い風が吹き始めている。忘れてはならないのは自分たちが偉いのではなく、厳しい時代を耐えてくれた先人たちのおかげで今があること。だからこそ、自分たちも良い酒を造り、次世代につなげなくては!」
熱い想いのこもった言葉に、こちらも胸が熱くなった。長年の日本酒ファンとして、物書きを生業とする身として、自分は次世代の日本酒のために何ができるのだろうかと真剣に考えさせられた。
日本酒に携わる一人ひとりが久慈社長のように次世代を見据えて、今できることをしていけば、あと数年で“日本酒ブーム”という言葉すら聞かれなくなるのではないかと思う。
例えばブームで始まったハイボールも今は当たり前のようにビールと並んでメニューにある。このように、当たり前のようにおいしい地酒メニューがどの居酒屋にもあり、多くの人が当たり前のように日本酒を飲む・・・。
そんな“次代”を心から願う。
※このコラムは、浅野日本酒店様からのご依頼で連載していたものに許可をいただき、加筆・修正して掲載しています。(連載:2016年2月)
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